「ジテンフェチの漢字Blog」のために書いたことだが、このブログにこられた方にも役立つかと思い、全文をそのまま転記する。
「日本語を読むための漢字辞典」のコンテンツ「国字の定義」で次のように書き、「Wikipedia」の「国字」でもほぼ同様なことを書いた。
しかし、この内容は、国字の定義としてやや広義に属する定義で、「やや広義の国字の定義」とでも断る必要があるかと思う。いずれかで私の定義したものを見られた方には、ダブってしまうが、範を厭わず全文を示す。
国字(こくじ)という用語は、次の4つ、細分化すれば6つの場合に使われる。
1. その国の国語表記に用いられている文字の総体。
日本の場合は、漢字のほかに、ひらがな・カタカナ・ローマ字などを含む。国家が公式に認めている文字か否かは関係がない(日本の場合、国が定めているものは常用漢字・人名用漢字・JIS漢字など一部にすぎない)。「国語国字問題」・「ローマ字国字論」などと使う。
2. 漢字に倣って中国以外の国で作られた漢字体の文字。
広義では方言文字・職域文字・個人文字や仮名合字も含む。学者によって定義・解釈が異なり、調査が不十分であるなどの理由から、国字とされる文字にも疑義がある場合が多く、逆に猟渉が不十分なため漏れた文字も多い。
ア)日本で、漢字に倣って作られた文字。
峠(とうげ)・榊(さかき)・畑(はたけ)・辻(つじ)など古く作られたものと、西洋文明の影響で近代に作られた膵(スイ)・腺(セン)・瓩(キログラム)などがある。主に訓のみであるが、働(はたらく・ドウ)のように音があるものもあり、鋲(ビョウ)・鱇(コウ)など音のみしかないものもある。会意に倣って作られることが多い。和字・倭字・皇朝造字・和製漢字などとも呼ばれる。
中国などにあることを知らずに作ったと考えられる文字〔「俥(くるま・じんりきしゃ)」・「閖(ゆり・しなたりくぼ)」・「鯏(あさり)」など〕や漢字に新たな意味を追加したもの〔「森(もり)」・「椿(つばき)」・「沖(おき)」など〕は、国字とは呼ばず、その訓に着目して 国訓と呼ばれる。
中国などで意味が失われているもの〔「雫(しずく)」など〕は、中国などで失われた意味が日本に残った可能性も否定できず、国訓ともいえない。国訓のある文字に着目して、国訓字と呼ばれることもあるが、一般的ではない。
〔「鱈(たら)」など〕のように中国に輸出されて定着した国字もある。〔「鰮(いわし)」・「鱚(きす)」など〕のように、中国においても漢字本来の意味で使われず、日本で使われる意味を輸入した文字もあるが、これらの文字は、漢字本来の意味が別にあるため、国字ではない。
『和製漢字の辞典』や『和製漢字の小辞典』で使っている国字はこの意味である。
イ)日本以外でも日本の場合と同様に、朝鮮国字・字喃(ベトナム国字)が作られている。
日本の国字と異なり、主に形声に倣って作られている。朝鮮国字の場合、構成要素に漢字の他、ハングルが使われる。日本同様に漢字に意味を追加したものを朝鮮では国義字といい、音を追加したものを国音字と呼ぶ。
(参考)女真文字・西夏文字・契丹文字も漢字に倣って作られたが、その民族の国家が滅亡して長期間が経過したためか、国字とは呼ばれない。壮族の作った古壮字も漢字に倣ったものであるが、中国の一少数民族であるためか、国字とは呼ばれない。
3. 次のように漢字仮名交じりにすること。
ア)漢文を、日本文で漢字仮名交じりにして平易に説明する。
普通「漢籍国字解」という。この「漢籍」の部分に題名を入れることもある。
イ)キリシタン版のローマ字を漢字仮名交じりにする。
「ローマ字本」に対して「国字本」という。国字の前に題名を入れることもある。
4. 2以外の方法で作られた日本の仮名や朝鮮のハングルのことを指す。
ここで、やや広義の国字としたのは、当然2アの部分のことであり、一見すると、なんら問題ないかのごとき印象を受けるかもしれない。
しかし、この定義だけでは、本来の国字と異体字のうち日本でできたものの区別ができない。
異体字とは、形音義のうち、音義は同じで形のみ違うものであるから、この区別をつけるため、次の定義を付け加える。
日本でできた漢字体の文字のうち、形のみ違い、音義が同じものは、国字とせず仮に和製異体字と名づける。
それ以外の形および読みが異なる(意味のみ同じ)ものもしくは形および意味が異なる(読みのみ同じ)ものを国字と定義する。
読みに関しては、訓読みのみで漢字に対する音読みがないものも読みが異なるとする。
以上の定義により、単に日本でできただけの異体字を国字と分離することができる。
なお、人名・地名などにのみ使われる文字で、その位相が非常に狭い文字を国字と区分することもできるが、誤字の範疇に属するもの以外は、国字の範疇から排除し国字の定義をより狭くするということは、ここでは止めておく。
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